■出土古文銭真贋・其の二■『五銖銭』発掘出土・癒着銭

なかなか大量ロットでの入手が困難なのが発掘出土銭である。また、出土状態が垣間見れる癒着銭などは、その道の研究家によって貴重な物である。なぜなら古銭商や収集家は美銭を求め、研磨などに耐えうる銭を捜し求め販売したり銭譜に記録したりするのが目的で、その人数のほうが圧倒的に錆の研究者よりも数が多いからであるが、出土状態そのままの貴重さは2000年以上の時を包含していて、一旦崩すと再び同じ時を経ないと手に入らないという事実がある。またそこに眼を付けた贋作作りも横行しているのである。贋作は商売としても成り立つということなのであろう。

今回はそのような癒着銭の実態に限って、経験からの判断方法をもって紹介する。古文銭以外の古代銭、布幣や刀幣についても共通の方法で見分けられると思う。

■前回に引き続き、第4のロット。癒着銭含み。6年前に入手時の写真。

SN326964

癒着銭主体のロット。玉衣の断片と、蟻鼻銭数顆が混入。全体としては各種各時代のものが混じっており、作為的に諸物が混入されたロットであると判断。根拠は癒着銭や銅貨の錆の色が数種ある由。特に蟻鼻銭についてはその物の真贋はさておいて、表面の緑青が殆どなく、明らかに違う時代のものである。

癒着銭についても以下の数種に分類できた。

イ・前漢五銖のみ、ロ・後漢五銖、ハ・貨泉、ニ・あやしい物。

イ~ハまでは、同種の癒着銭同士を比べると錆の色や土の付着状況等に差異はなく、側面の錆の付着状況も自然で、銭の厚み等も均一なので直感的にでも人偽的に癒着された物ではないという事が感じられ、実際にこじ開けた場合でも銀化結晶等により確信が得られた。

反して、ニ・の「あやしい物」、については以下の事実が確認できたので明らかな贋作ロットだと確認できた。

それはまず、

1.銭の径が不揃い。

2.次に癒着部分が錆色ではなく大抵は茶色系か灰色系、そして良く観察すると現代の樹脂系の接着剤に土を混ぜたものだと判る。

3.端の数枚は割と銭文が明瞭な美銭であるが、中心部分はひどい錆等の再起不能な最悪状態の銭。

4.側面から観て不規則に厚みの違う銭が混じり並んでいる。

5.最悪な物は、塊を側面から観ても見えない中心部分は宋朝銭や清朝銭等が混じっている。過去の同様の調査では寛永通宝まで出てきたことがあった。

6.更にこの類の作為的な癒着銭には、繋がった孔の奥深くまで土が入り込み、布か藁のような繊維まで入っている事もある。

7.往々にしてこの種の癒着銭の側面や前面の錆には、良く観ると布目が残っている。

上記の状態から推察するに、安価な後世の宋朝銭などを挟んだ後、銭を一枚一枚接着剤で繋げるのではなく、余り長くない適当な長さに積み上げた銭の孔の中に、藁や劣化しやすい木綿紐などを通し、銭の孔の奥に泥と接着剤を流し込み、周囲がばらけないように布で巻き、そしてその外側から内部に浸透するくらいの大量の色付けした接着剤を塗りつけ、最後に更に土を塗りつける。その様な作り方をしていると考えている。

大量に一箇所からまとまって出土する場合はその癒着した塊の長さは最低100枚単位であろう。その場合は、一番外側の端の銭のみ腐食がかなり進んでおり、癒着した部分が折れて外れた部分の銭面の状態とはかなり違うはずである。数センチごとの癒着塊として全体が同じような腐食状態ということはまずありえない事である。誠に稚拙な出来栄えである。

勿論この方法以外にも更にうまく欺く方法はあるであろう。駄物を掴まされない様に、今後も益々研究していきたい。

蛇足であるが、混在の玉衣の断片は、四隅の縫合の為の孔の形状も、それぞれの玉質や、厚みという出来栄えもかなり良く、一枚一枚手が込んでいて過去に観た事のないような代物であった。場合によるとこの玉片の方がずっと珍しいかもしれない。

次回に続く・・・。

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