■出土古文銭真贋・其の一■『五銖銭』前漢後漢発掘古銭

日本の「和同開珎」から遡ること一千年。中国古代の秦漢時代から唐代にかけての古文銭は、ここ20年程の間にかなり発掘され出土銭としてそのロットのまま市場に出回った。最近では中国国内のバブル期を通じてかなり高騰してきており、無垢の出土銭状態のロットも少なく、真性ロットに見えるように工夫や加工をし、収集家や研究家を欺く商人も多くでてきた。以下に簡単ではあるが、実例を踏まえてその見分け方を紹介する。紹介内容はその全てではないが、参考にしていただければ幸甚である。

■まず、最初の紹介ロット。これは真性ロットであろう。10年ほど前に入手。

SN326960

このロットの古文銭はほぼ全てが同じ時期の前漢五銖であり、錆色も均一同様で、混入している鐸の錆も同質で同じ場所から出土した物であると判断できる。土の付着がかなりあるが、専門家(中国国家科学院の研究者)に見せたところ、「洛陽」の土の特徴があると確認できた。付着銭が少なく確認しやすいので水洗してみると、錆の状態もほぼ揃っていたので間違いないと考える。選銭はこれからだが、目下、王莽銭以降の物はこのロットの中には見当たらない。

■第二のロット。混入物あり。五年ほど前に購入。

SN326954

本ロットは後漢五銖主体であるが僅かに前漢五銖も混じる。更に、ご覧の通り、銅器、玉器もかなり混じる。王莽銭は混じらない。数枚の前漢五銖は意図的ではない後の混入とすれば、後漢五銖の状態から見て五銖銭自体は同じ所からの出土であろう。しかし、付着土や破片の状況からすると選銭され、良銭や希少銭が抜かれた状態だと考えられる。五銖銭の破片の断面に錆が一切付いていないゆえ、選銭の際無理に割られたものだと推察できる。何よりも混在している銅器の新しさが目に付く。玉器にしても白玉の小管や小璧の表面の白化状態以外は時代もまちまちで、玉質も地方玉や新疆玉が混じっている。中型の璧に関してはあたらしい物に土を塗っただけであり、ましてやその土色は銅銭に付着した土色と明らかに違う。このロットはおそらく出土地は同じ真性ロットであるが、後世というより現代、人の目を引くためだけに、古玉新玉を問わず、また人工的に緑青を噴かせた小銅器等も作為的に混ぜたものであろう。古文銭主体に言えば、半分真性ロットということであろうか。

■第三のロット。混入物少々。数年前入手。

SN326961

下手な説明は不要だと思う。明らかに古く見せるための色付けがしてある。この色は顔料や絵の具ではなく、土と鉄錆を混ぜたものであろう。水洗すればすぐに落ちる色である。出土地によっては、鉄分の多い地層や辰砂を含む地層で掘り出されたものはこの色合いに近い。しかしこのロットの銭を数枚洗ってみればすぐに判明。現れた銭自体は全て緑青色である。更に銭の状態も悪く、厚い緑青で銭文すら読みづらい物が殆どである。玉製貝貨が一つ混入しているが、これも明らかな新造品である。更に全て洗い選銭してみると、数枚の王蒙銭(貨泉)が混じるばかりか、北宋銭や清朝銭も十枚ほど混じっていた。明らかに混生ロットである。またそれは一枚一枚選銭した後の、資料的価値皆無の不明瞭銭の状態を隠す為に色塗られたとでもいうべきロットであった。いくら欺き販売する為とはいえ、少量の清朝銭まで混ぜる必要はないのにと呆れる。勿論殆どの銭種は「後漢五銖」であった。「前漢五銖」がそんなに勿体無かったのだろうか・・。

次回に続く・・・。

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