『中国上海』骨董品購入・仕入れ・交渉術・場所・時期時間帯その他⑥

私事いろいろあり、今回も投稿がしばらく遠のいたが、前回の予告どおり上海中心部南京路の少し南、上海老街とも言われる豫園商場付近の蔵寶楼ビルについて紹介しよう。

方濱中路が外灘に向かって急に賑やかになるその起点の北側にそれは位置する。ビル正面の広場に大きく『蔵寶楼』と書かれた碑があるのですぐ判るはずである。周囲は土産物屋や怪しい小さな骨董品店がひしめく迷路のような建物で囲まれており、その一回には茶道具屋や水晶等の美石屋、それに石仏等を並べている店があり、蔵寶楼の建物自体にも額がかかっているので間違うことのない5階建てのビルである。

ガラスの扉を押して一階に入ると、見渡す限り翡翠や玉や水晶などの加工品や原石を販売している店舗が並んでいる。概ね一階はその類の装身具を扱っている店が占めているが、よく見ると木彫品、銅器などの金属工芸品、清朝や民国時代のレプリカ貨幣などを大量に床に並べている店も目に付く。奥に行けば行くほど陳列も雑然としていて、商品自体も光彩を削がれた骨董品といえることもできそうな雑多な物が床にまで並べられている。

おそらく、きれいな日本の百貨店などに慣れた日本人なら奥に進むのを躊躇するかもしれないが、慣れると気にはならない。一歩外に出るとかなりの人数が闊歩している西洋人や、明らかに観光客の日本人などは奥に入ってきているのをついぞ見たことがないので、やはり進入しがたい雰囲気があるのであろう。

入ってすぐ左手と、奥の左手、そして再奥の右手に階段があり、そのどこからも中二階に行ける。中二階は一階を見下ろすように回廊になっていて、もう、一階の少し高価そうな美しい宝石のような装身具などを売っている店はなく、全てが骨董品やそれらしく見える工芸品などを扱っている。上海広しといえども、古玩場(骨董商ばかりのビル)の中では老舗の蔵寶楼であるので古くからの業者も多く、発掘品から土産物屋までさまざまな店が並んでいる。

二階に上がると印材や玉製品、やっとこの階まで来て何とか骨董商ばかりの気がしてくる。ここでは人の動きも緩慢で、売る側、買う側双方がマイペースで動いている。更に三階に上がると陶磁器や墨屋や硯屋等の書道具商、発掘品の類、果ては民国時代の庶民雑貨を並べている店もあるが、それぞれ暇な毎日のせいか、主が数人集まって商売そっちのけでトランプなどに興じている姿もいつもの光景だ。勿論訪問者に物を売りつけようという呼びかけは聞かない。一階との大きなこの違いは、わざわざここまで来る客は目当ての店にだけ寄るのを了解しているからであろう。そういう意味ではゆっくり品定めができる。

四階は常設ではない、フリーマーケットよろしく、定例曜日に店舗を持たない商人たちに場貸しし早朝から17時まで時間限定で空けている。半坪ほどの場所にそれぞれが持参した商品を並べ決して広くない木製の床の地面に所狭しと並んでいる様は壮観である。約200人位は居ようか、よく見るとこのフリマには二階や三階で常設店舗を構えている者たちも何人も居る。最近は週のうち半分位の曜日で同じ光景が繰り広げられるが、やはり何と言っても土日の骨董マニアの人出はかなり多いようだ。

そして最上階の5階。通常は鍵がかかっているテナント業者の倉庫が並んでいるだけだが、最近改装され、店舗として営業している店も出始めた。

いずれにしても、外から見ると周りの高層ビルにその存在感を失われて入るが、中国の骨董ブームを反映してか、「よくもこんな所に色々な営みがあるものだ。」と感心することの多い建物である。いったん階下に降り、外に出てみるとそのギャップに唖然となる。そこは世界有数の観光地であり、行きかう人々は観光客かキャッチセールスのようなしつこい物売りを避けながら繁華街を楽しんでいるのである。

今回はざっと『蔵寶楼』の内部につれ触れたが、次回⑦からは、より細部にわたり紹介し、あわせて五階のフリマの様子なども伝えたいと考える。乞うご期待。

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