■出土古文銭真贋・其の三■『五銖銭』発掘出土・付着土、錆

今回は、付着土や錆について簡単に述べる。より専門的な詳細については、土や錆の研究家の論考を参考にされたし。ここでは購入を考えた際の簡単で瞬時の判断の仕方についての一例として述べるのでご賢察いただきたい。入手時の交渉は一瞬の判断が基礎になるのでその参考にはなり得ると考える。では早速下記。

■今回の最初のロット。五銖銭以外の混入物、ほぼ無し。

SN326958

混入物が無いと、後でゆっくり選別しようという楽しみを抱いている出土品マニアには楽しみの少ないロットである。また、美銭マニアにとっても付着土は不要であろう。錆銭にいたっては極力少ないほうがいいことは明らかである。

このロットと対面したとき、筆者も「何の変哲もないロットだな・・。」と一瞬思った。しかし、良銭を入手しようと考えたり、何度もいうが、瞬時に真贋を判断しようとした場合これほど判断しやすいロットはない。本ロットについてはその付着土の色や厚みがほぼ均一で、また錆の状態も同様、一見して同時代の物と判断できる。加えて銭自体の状態も良く判る。短時間で大体の枚数も見当が付き、交渉を有利に進められた。勿論選銭の結果は期待を裏切らなかった。少量の王蒙銭(貨泉)を含む彫りの深い後漢五銖の集合であった。長期間良く通用した後漢五種の彫りの深い物は割と少ない。更に破損銭は少なく、いい買い物であった。判断の基準は土色の均一性、銭の状態の均一性、そして錆の状態の均一性である。ロットで入手しようとした場合、その均一性が何よりも重要だという手本のような集合体であった。極力このようなロットを探したいと考えているが、ここ二三年でほぼ出土銭のまとまった枚数のロットものは見かけなくなった。その分、他の時代の物や状態の悪い銭を混ぜた物を良く見かけるようになった。

■混入物の多いロット。三年ほど前に入手。銅器混入物が多い。

SN329595

明らかな後世の「混ぜこぜロット」である。理由は破損した銅器等が多い。例えば、写真に写っている様な銅鏡が粉々に割れるのであれば、五銖銭の破損銭がもっとあるはずである。良きに考えれば銅鏡の完品などが当初は混じっていて、それらを抜いた後のロットとも考えられないことはないが、そうであればそれは既に「手の加えられた」ロットということである。当然五銖銭も状態のいいものや希少なものは抜かれているであろう。

また玉器も混じっているが、玉質の良い新疆玉の玉器ではあるが、後漢の時代にこのような玉器が混入する事は可能性が低い。何よりもこの玉器自体、現在新疆地方で良く作られている参考品である。玉器の良くわからない方には申し訳ないが、このあたりの知識があれば一目瞭然であろう。

銅鏡以外の他の銅器の破片については不自然な錆び方で、かつそれぞれ色合いも違い、後の混入品である事も想像がつく。銅銭の錆には多種多様な色の錆があり、一概に緑青と呼ぶが、緑、青、青緑、茶、黒、赤、赤茶、銀化、銀化結晶とかなり多様な物がある。それらの生成の基本というのは錆の研究家に任せるとしても、最低限の知識は持ちたい。最大のポイントは、このように五銖銭自体の錆の色合いが違う物がいくらも混じっている物は良く見かけるが、その殆どは色々な方法でロットの嵩を増やしたのであろう。

とは判っていても、選別の楽しみや勉強の為と称し、結果入手したことは間違いであったとは考えていない。本当にこのロットの選別作業は楽しかったからである。

■最良ロット。

SN329591

入手時一見して正真正銘の良ロットと感じ、持ち帰り後早速選別を始めた所の写真。混入物無し、前漢中期から後期頃の銭以外には一、二枚の四種半両が混入していただけである。破損銭も少なく状態も非常に良く、間違いのないロットであった。このようなものに当たる事は余りない。記号銭や珍銭を探すには最高のロットである。なかなか出会うことのないこのような機会を期待し、更に一瞬で判断できる力を高めていきたい。そのためには他の銅器や玉器、地域による土色の違いや錆色、そして当時の生活等の時代背景を研究する事も大切であり、日々研鑽すべきであると考えている。

(古文銭真贋・完)

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