『中国上海・豫園商場』骨董品購入・案内紹介マル秘情報「蔵宝楼の四階・その5」⑰

・・・⑯より続く・・・

さて、蔵寶楼の紹介も終盤に入ってきた。

今回はおそらく中国全土、そして全産業に共通することかもしれないが、この骨董品買い付けの時期で一番いいのはいつか、ということについて所感を述べる。

日本とは若干違って、「骨董商はお金持ち」「役人を除けば社会的にも上の階層」というイメージを持つ人の多い中国において、店舗を持つ骨董商も含め行商の彼らも自由業という性格上、割と早めに春節を迎えるため故郷に向かう。

日本とは比較にならない広大な国土を持つ彼らのその感覚は島国日本の庶民にはなかなか理解できない。例を挙げると、上海から哈爾濱に向かう鉄道在来線の時刻表は翌々日迄続いている。すなわち一日どころか、足掛け3日かかる距離なのである。内陸奥深く、四川や広州、新疆等、それよりも長距離、長時間かかる。

春節前の都市の駅前、それも上海、北京、大連等の大きな駅の周辺は、布団袋のような大きな土産物を持った数千の人で埋まることもある。まさしく民族大移動の様相である。

よって、自由人たる古物商の面々はその前に移動しようと試みる。

春節(日本で言う旧正月)というのは旧暦に基づき、年によって、一月末から二月末の意連れの日にか当たる。その約二三週間前から民族大移動は始まるのである。

逆算すると早い年では1月半ばには、春節を迎えるための移動費や正月経費を得たいというのが彼ら共通の意識である。

それを確認し、1月の初め~1月の末に上海行を予定する。友人や繰り返し取引をしている善良な骨董商には彼らの喜びそうな土産を用意する。

そしてこちらも年によっては正月明け早々、ホテルや旅券の手配をすることになる。年に何回渡中していても、そしていくら寒くても、この時季を逃すと「春節の為に商品を現金化したい。」という中国人骨董商には簡単に勝利できない。これは、自身が感じた鉄則である。

この時期の、蔵寶楼の、そして土日週末の四階の市はこちらも真剣勝負だ。この時期にいつもと同じ価格で交渉していては男が廃る。ということで、意気宜しく出かけてゆく。

しかし、もう一つ考えないといけないことがある。彼の国では自由業の彼らのみならず、仕事に見極めの付いた者から順に、貿易会社も運送会社も資材業者も、果ては役人達までもその影響を一切考えず休み始める。

そうなれば、仕入れ購入した物品が、郵送であれEMSであれ、船便であれ、全てマヒしてしまう。要は、最悪の場合送った荷物がどこか(空港や港の倉庫や船の中)で止まってしまうのだ。上手くいって船便で日本の港に着いたとしても、送ったという連絡もせずに彼らは自身の帰省活動に入ってしまう為、そしてそうなれば最後、約二週間の間彼らの活動は停まり、気が付けばすでに日本の保税倉庫に保管されていて、一日一日とどんどん倉庫費用が嵩んでしまっているのに気が付かないという事態になってしまうこともある。

春節の日はその年はいつか。そして逆算し、船便会社はいつごろから休むか、そして商品を船便会社に持ち込むことができるのはいつごろか、そして、だから、いつ頃までに仕入れを完了しなければいけないか。そのように逆算して蔵寶楼のどの土日に行くかを決めなくてはいけない。

勿論、自身で持ち帰る場合はそんなことは考えなくていい。しかし、それでも春節前になると、最近では海外旅行をする中国人は増えているので日本への航空便の席も取りにくくなっている。色々考え無くてはいけないことが多いのが現状である。

・・・⑱に続く・・・

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