『中国上海』骨董品購入・仕入れ・交渉術・場所・時期時間帯その他②

前回、①では上海特有の言語や中国国内の位置づけについてかなり大雑把に紹介した。今回は商取引というと大げさだが、よく聞く中国人との取引で注意しなければいけないことを、実際の経験から、上海人に限って一端を紹介したい。

巷では、中国人との取引には信用は禁物、とよく耳にする。さて、このブログにどう表現すればいいか、一言で言うと、上海に限らず他の中国国内の一般の人民について言えば、若干文化の違いはあるが、そのところをよく理解していれば大抵は気持ちよく滞在できるし、買い物もスムースに行く。

亡くなった父は、昔、よく、「中国人は仲良くなれば、こちらが思う以上に情が深く、信じられないほど友情を大切にする。」と言っていた。昭和初期産まれのその言は、現在の日中間のいろいろな問題を一蹴する言葉ではあったが、時代の差異ということを差し引いたとしても、自身の子供である筆者に言う言葉としてはおそらく間違っていなかったであろう。それから何十年、自身、現実に渡中し、実際に付き合いし、何人も親友のできた今確信できる。

まったく今の現状で言うと、その成果や善悪は別として、かの文化大革命の時代の出来事や教育は、今の大多数の一般の中国人民にとっても印象はよくないことが感じられる。開放政策以降はますますその感が増しているようで、共産主義国でありながらここまで貧富の差が顕著になっている状況からもそれは窺える。

上海のような大都市、かつ中国一の大商都には非常に自由な空気が流れていて、一般庶民の生活はかなり活気にあふれ、臨機応変という言葉を髣髴とさせる空気が漲っている。そのような中でも、一個の人間としてのモラルという部分では上海は中国隋一の良さかもしれない。19世紀以降世界各地の先進国である西洋人や、東洋の紅一点の日本との貿易で、古い中国とは違う発展をしてきたからかもしれない。

一つ例を挙げる。渡中初期のころ何回か通訳に頼った。全く中国語のできない身に不安は募ったが、ある日商談をしているさなか、売り手である中国人にこちらの要望を伝えていた通訳が突然こちらの方を向き、日本語で「この売り手のおじさん、悪い事を言っている。」と言った。「何言ってる?」と問うと、「バックマージン渡すから、中国語の分からない日本人に上手く言って高く売りつければいい。うまく通訳の立場を利用したらいいのに・・。」と言っていると言う。そして、「私は通訳として貴方に雇われているのだから私の主人は貴方。貴方の為に貴方の立場になり通訳するのが上海人である私の務め。」と言う。更に「上海人の誇りを持って彼らには負けない。」と言う。他地域から行商に来ている地方人(上海人の地方に対する感覚)とは違うというプライドに感心。

更に別の例を挙げる。数十万円単位、そして数百個単位で商品を買い付け、商談が成立したものは一か八かで彼らに梱包や運送、そして通関や発送まで任せて、帰国後税関の検査を経て受け取る。受け取るその時まで最初のころは不安が伴った。きちんと送ってくれるか。商品の数を誤魔化されていないか、ぞんざいな梱包で破損はしていないか・・。それはそれは不安が募る。しかし、その後何度も任せて、一度たりとも間違いはなかった。よく言われる「信用できない中国人」というのは、何十人と商取引をしてきた現状下、一人もいなかった。

上海人含む華中と華北人とではかなり国民性が違うようだ。というより、同じ中国人でもお互い仲がよくないことは現地で肌で感じる。お互いの悪口を「彼らは信用できない。」と言う。だがしかし、その両方とも今までのところ変な日本人より信用に値することは経験済みだ。特に価格交渉が非常にシビアーな上海において、成談後の約束遵守の確率は未だ100%を達成している。そういう意味ではしっかりした交渉が必要であると考える。相手の立場を慮ることが美徳、ということを曲げて捉え、きちんとした交渉をせず、言いたいことも言わず控えめに物申すという日本人の悪癖は、ここ上海では不必要である。一所懸命譲らず交渉し、商談がまとまれば真摯に正直に対応する。それこそが商都人の誇りと感じさせてくれる地である。

譲るところは譲っても、譲れないところは譲らず。相手と自身を信じて交渉することが肝要で、それに対する報復などはまず無いと信じてもいい地であろう。

③に続く・・・。

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