●南信州の名所●巨木『立石の大杉』

『立石の大杉』(長野県飯田市立石)

中央道飯田山本インターを出て東側、国道153号線と151号線に挟まれた地域は中央アルプス最南端の山地から天竜川に至るまでの緩やかな傾斜地で、その殆どが文字通り静かな山村である。長野県最南端の市である飯田市、そのまた南端にある立石の集落は、下伊那郡下條村、阿智村と境を接する通過者の殆どいない袋小路のような擂鉢状の小盆地の底の集落である。江戸時代から干し柿の産地として村民の生計を繋いできたその立石柿は、今では飯田市北隣の高森町名産の市田柿に変えられて、秋の収穫時季には見事なまでの柿簾の光景で満たされ、その風景を撮影に来る東海地方の素人カメラマン以外はほぼ他所の者は訪れない。

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ここは民家といくつかの村民の集会所のほかには商店も無く、ましてや一日2便のバス停以外は信号も交番も一切無い集落だが、条里制の名残で山間の集落にしては珍しく碁盤の目になった道で田畑が区切られており、一つの神社と一つの寺、そして2本の大きな杉がある。その2本の杉の巨木は『夫婦杉』と呼ばれ、下伊那地方ではかなり有名な存在である。毎年彼岸の頃には数百メートル離れたお互いの影がその根元に届き合うというロマン満載の巨木である。

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樹齢、共に約千年。雄杉の方は頂部が落雷で枯れているが共に見事な直幹で、その根元に立つとスッと天に伸びる威容に驚く。周囲の山の頂上からでもそれとわかるこの2本の夫婦杉には、いつの時代誰が名づけたか雄杉の近くに『子杉』なるものも立っており、この集落の人々の安寧温厚な文化が窺える。

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集落より南アルプスを望む(画面左上に雄杉)

雄杉は集落唯一の「日枝神社」の御神木、雌杉は個人所有という事であるが、最近では数少ないその直下まで足を踏み入れ鑑賞できる巨木であるので是非ご覧頂きたい。我々人間にとっては途方も無い年月を生き続けてきた巨木は、静かにその前に立つと必ず何かを語りかけてくれるに違いない。

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雄杉を見上げる。

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夕日の射す雄杉(右)と子杉(左)

ちなみに雄杉の根元にある小さな広場では、毎年7月に『立石の祇園祭』と称する集落の祭りが催行される。古来、人と自然が溶け合って共生してきたその様子を、この『夫婦杉』はずっと見守ってきてくれたのであろう。感謝の念に堪えない。

(『夫婦杉』の樹高根回り等の詳細については飯田市の観光案内等に詳しく紹介されているので、そちらをご覧頂きたい。)

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