『中国上海・豫園商場』骨董品購入・案内紹介マル秘情報「蔵宝楼の三階」⑪

このシリーズ、今回もかなり前回より時間が空いた。お許しを!

さて、二階、中二階を元の階段に戻り三階に上がる。ここから上の階は迷路のようなフロアーではなく、だだっ広いワンフロアーに骨董品店がひしめいている。すべて常設の店舗である。もう10年近く通っているが出店者の顔ぶれは殆ど変わらない。

トイレはこのフロアーだけにある。もよおしたら五階に居ても一階に居てもここまで歩いて上り下りしなければいけない。実は建物には一基、荷物運搬用の大きなエレベーターがあるのだが、これにはいつも係員が座って乗っている。三階や一階の常設店舗の業者で顔の利く者と一緒に乗れば文句は言われないが、一般人が乗ると必ず中国語で叫ばれ、下ろされる。

彼らは大抵がいつも何か、ひまわりの種やかぼちゃの種を食っていて、辺りにペッ、ペッと殻を飛ばしているので、文句を言われるとその態度にかなり腹が立つ。しかしろくに中国語も話せず、弱い立場はこちらなので仕方なく係が乗っているのを確認すると乗るのは諦める。

この三階のトイレは、周囲の店舗部分はそのままで二三年前に少し改修されてかなり綺麗になった。異様にトイレだけが綺麗になったという表現が正しいであろう。

以前は、よく聞く中国のトイレ事情では普通の、大便は仕切りも扉も何もなしで奥から入り口までタイルに切った溝を足で跨ぎ、座って衆人環視の状態(と言ってもトイレ内でだけだが)。

その横にて、小便は便器なしで、これまた水の垂れている壁に向かって並んで排尿する。床は小便でほぼ全体が濡れていて、排尿の際はうまくズボンを持ち上げてしないと裾が湿る。筆者は慣れて、上海市内を歩くときは必ず裾の絞ったズボンを履くことにしている。そうすればどこの便所に入ってもズボンは汚れない。

少し話が逸れかけたが、その状態の便所が今では数個の個室になった。と言っても隔壁と扉が付いただけなのだが、そしてその扉や壁は白く塗られて本来なら明るく感じるはずなのだが、おかげで不思議とかなり狭く暗く感じるようになった。個室にして窓の採光が半減したためだろうか。

中国ではトイレのことを一昔前や田舎の地方では「厠所(ツースオ)」と言った。今は少ししゃれた言い方になり、「洗手間(シンシュオジェン)」と呼ぶようになってきた。手をいくら洗っても決して清潔感の無いタイル張りの床の感覚は、どうもその言葉に馴染まない。

女子トイレは入り口が別なので入ったことは無いが、どうやら同時期に改修され、以前よりは近代的になったらしい。それにしても隔壁や扉すらなかった頃の女子トイレを想像するとおぞましいものだ。

さて、トイレの話が長くなったが、トイレの真正面含め、このフロアーには約50軒ほどの業者が入っている。商品は陶磁器、玉製品、木製品、墨、硯、銅器、文革物、ガラス物等々、それぞれ同じジャンルの業者が数件ずつ板の上に商品を載せて並んでいる。

しかし、いつ行っても、「いらっしゃいませ!」という感じの声かけをしてくる業者は一部である。よほど物好きな外国人で無いと、この三階まで深追いして来ないだろう空間なので、大抵は珍しそうにこちらを見ている。もしくは数店舗の主人が集まって賭博トランプに興じている。客よりトランプの方が大事なら、出店している意味は無いだろうに・・・。

商品は、「本物」と「偽物」と「複製品」だが、圧倒的に後者二つが多い。複製品ですら偽物である始末。何度も通い、目を肥やして来ないと相場すら分からず、大抵は迷い込んだ蝿のように彼らの餌食にされてしまう。それも5倍どころではなく何十倍の値段で餌食だ。決して欲しがる目つきをしてはいけない場所である。

「本物」は、大概が文革物や民国末期の骨董品。今ではどうなったか知れぬが、文革時の寄木細工の振り子時計など、日本円で400~500円で買えたものだ。中国一物価や所得の多い上海では全ての物品が年々かなり高騰し、今では2000円くらいはするのは当然であろうが、このような大きい物を沢山買って飛行機で帰国すると効率が悪いことも事実。自身の失敗談として付記する。

文革物で効率がいいのは、紅衛兵の腕章や毛沢東バッチなど。しかしこれらは溢れかえっているし、量産され、当時物でもおもちゃのような造りなので、真贋を見極めることも困難である。もっとも色々数を見ていれば判断は付くが、分からなければ同じ物が多いかどうかということも判断基準のひとつになる。

「まくり」と言われる額装や軸装にする前の手書きの書や絵画は大抵が今の物である。それらに混じって文革時の土地権利書や公文書に出会うことがある。彼らもまた本物をよく知らないにわか骨董商の場合もあるので、紙物には掘り出し物あり。逆に銅器や陶磁器、そして高価そうに見える玉などは、このビルで売られていること自体が偽者や模造品である証明とも言える。

以前本ブログに投稿した「燃える端渓」や「減らない墨」など、それぞれの専門の商品を並べていても、半分は偽物、そして少しはいい物もあることは知っておく方がいい。

信頼関係ができると、買い物の間、荷物も預かってくれ、しっかり梱包してくれ、場合によってはホテルまで運んでくれたり自宅に招待してくれたり、食事に誘ってくれたり、終いには下男よろしくボディーガードのように買い物に動向どころか、荷物持ちもしてくれるようになる。そうなれば彼らは下心の無い民族だと感じる。その傾向は上海人に強い気がする。

簡単に三階の様子を記したが、次回はいよいよ四階の様子。と言いたいが、その前にひとつ飛ばして五階の様子を述べよう。四階の様子を伝えることが一番時間がかかり、そして面白いと考えるのであしからずご了承いただきたい。

では次回!

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