『果物 格外品販売』果実選果場 桃梨りんご 南信州

産地での市場一般価格との違いは驚くものがある。

小家の近く、と言っても距離にして25km程はあるのであるから決して至近とは言えないが、信号の余りない田舎のことであるから30分もかからない所に、JAの果実選果場がある。そう、この地は果樹栽培が盛んな地域なのである。

此処では、近郊の農家がそれぞれに収獲した果実を一括で持ち込み、職員が選果し、商品としての合格品と格外品に選別し、合格品は全国に発送され、南信州ブランドとして店頭に並ぶ。

大きさ、見掛けの形、糖度等によりランク付けがされ、5kgや10kg単位で販売される。それ以外の物が格外品と一括りに扱われ、その場で処分される。処分と言っても全て捨てられるわけではなく、傷、変形、小玉、変色といった、自家用として問題ないものは希望者に販売される。

格外品を処分しなければ、産業廃棄物として収獲のピーク時にはかなりの経費がかかり、選果場側としても希望者に販売できれば一石二鳥のメリットがある。特に天候不順や台風など大きな災害があった年なら、落果や傷も多く、大量に格外品が出るわけである。

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ネット時代になり、最近は農家も自家で得た顧客に直販をする家も増え、また営業力のある農家においては大々的に直販し、JAの選果場に持ち込まない所も増えたようで、ここ15年くらいの間にJAの格外品の放出もかなり減ってきている。それに伴い、今まで驚くほど安価だった放出格外品の価格も、知恵がついたのか、あまり魅力の無いものになってきた。道路際の無人販売が農村に行くと嘘のような安さだったのが、今では少し安いな、と感じる程度になったのと同じ現象が起き始めている。

とは言え、収獲最盛期には平コンテナ1杯500円、1,000円、1,500円という価格は破格で、傷果であろうが小玉であろうが色が悪かろうが、愛知静岡方面から人が殺到する。それもその筈、平コンテナ1杯は桃にしても梨にしてもりんごにしても小玉なら40個くらい、中玉のしっかりした物でも30個程度は入っている。

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この選果場の直売所の格外品放出は夏場の桃から始まるが、暮の富士りんごを最終として年末選果場の操業終了間際になると「真の在庫処分」となり、1コンテナ300円という事態も稀に発生する。小玉なら傷がなくても1個8円を割るという計算だ。そんな時初めて訪問した客の頭はぐるぐる回り、目は点になること間違いない。

さて、では味の方はというと、まず、収獲直後の農家からの持込が基本なので新鮮であることは間違いない。収獲者にとっても置き場所の問題もありすぐに持ち込むのが当然であろう。採って長く置いたとしても、せいぜい翌々日には選果場に持ち込む。

次に選果の手順。まず、コンベアーに開いた穴を抜ける、小玉の排除。そして目視による色や傷、形などの不良果の除去、最後に糖度計を通し大きさとともにランク付けされる。よって、小玉や傷果ということで撥ねられた格外品は糖度の高い物も満遍なく混じっている。勿論味にはバラつきがあるが、筆者はそこまでは安価な格外果には期待していないので絶品の味が混じっていればもうけ物と考えている。

果実も野菜と同じで収穫後時間がたっていない方が確実においしい。日に日に味が落ち、生産者や産地の庶民にもその違いはわかるようだが、日頃からスーパー等で購入した物を食すだけの方には気がつかないかもしれない。

よく都会部の量販店で売られている果実は、収獲→選果場持込→選果→放出→コンテナ詰めなおし→搬送→店頭納入→消費者購入という手順を考えると、収獲から数日から1週間近く経っているのがお解りかと考える。見た目で判らなくても食してみるとその差は歴然だ。

とはいえ、その格安さに目をつける業者は以前から存在する。選果がピークで、選果場前に11トンのコンテナ車の並ぶころ運転手に訊いてみた。関西方面、それも和歌山辺りからみかんの格外品を積んできて甲信地方に下ろし、甲信地方で桃梨りんごを満載するというのだ。そしてそれを関西まで運び、どこかの業者に卸すのかと思えば、仲間の売り子数十名に販売させているというのだ。彼らがごっそり持ち帰った後は二三日後に関西のスーパーなどに「訳あり果実」として並んでいる。周囲に置かれた段ボール箱の産地標記の印刷からも納得でき、何かなつかしい気にさせられる。

当然、この様な商売にする業者ばかりではない。勿論当日販売は一般人でも購入できるし、たまにイベント等で大量に必要なのか、他の市町村の観光課やNPO団体の職員達も大人数で来場し、現地で持参したコンテナに詰め替えている光景も見られる。最近は口コミでかなり広がったのか、開場の9時を待たず行列が出来、午前中の短時間で格外果のみ売り切れるということも屡な様である。

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これ以上の情報もあるが、情報放出も今回はこれくらいにさせていただき、最後に一点。選果場の直売所では平コンテナ一枚10kgというふれこみで販売しているが、桃や梨は小玉の場合、数があっても高さがないので10kgを越えることは稀で、傷果でも中玉の場合は約10kg。りんごは軽いので約8kgと考えていればいいであろう。勿論コンテナごと重量に細かなバラつきはある。

その時その時の用途によって、傷果交じり、玉の大小、コンテナ一枚辺りの価格を勘案し、最適なものを選べばいいであろう。ただ最近はりんご南限の地としての南信州も温暖化の影響で収穫量が減ってきているようだ。とはいえ、同じ品種なら、よりあたたかく、寒暖の差の大きい南限の物のほうが美味いのは自然の摂理である。

今回の紹介を終えるにあたり、我々も含めマナーには気をつけたい。コンテナの中身を摩り替えたり、購入枚数をごまかしたりするのは論外だが実際に見かける。また、尾張三河や豊橋地方からおばさんたちが乗り合わせて早朝より買い付けに来る方々の中には、ゴミは捨て放題、箱に詰め替える作業の際、周囲への配慮は皆無で我が物顔、傍若無人極まる方々が目に付く。その安さに舞い上がるのはいいけれども、日本人として恥ずかしくない行動をとっていただきたいと願う。

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