『田舎暮らしの盲点・南信州の冬生活』低温風雪暖房凍結

北海道や東北どころではないが・・・。

関西や首都圏から、定年退職後は自然に囲まれ人間らしくのんびりと・・、との想いから田舎暮らしに憧れ、急がば実行、とばかりに一気に事を進める御仁達に参考になれば・・・。

生活の環境、特に社会的なルールや仕組みが大都会とはかなり違うことの一端は、以前にも少し紹介した。今回は自然環境やそれに付随する事項を思いついたまま記す。

庵主が二重生活で南信州に居を構え、事業を始めて間もない頃、そう、初めて迎えた冬のことだ。

山々に囲まれ、居室や寝室の窓からも美しい紅葉や満天の星が見え、自然環境この上ないと喜んでいたのが、日々日照時間が少なくなり、日々の平均気温や最低気温が徐々に低くなり、12月ともなれば暖房も要るだろう・・・、と暢気に構えていた11月。雪の少ない地と言われていた長野県最南端の当地に雪が降った。

降雪や積雪は出身地の大阪ではごく北部を除いてはそう多くあることではない。都会人特有の「雪を見て心騒ぐ』ウキウキした気分になったものだ。その時は大した積雪もなく、確かに屋外に出て天を仰ぎ、心が充実したものだ。

しかし、である。12月の中旬を過ぎ、年が明け、二月を目前にすると、これはただ事ではない事だと思い始めることに。

もともと古い時代に建てられた自然石の上に柱を立てただけの置き基礎のかなり広い純木造家屋。要するに畳の下は板一枚でその下を風が吹きぬけ、室内には床下を吹き抜ける外気が直接伝わる。都会の現代家屋では石油ストーブ一台で十分保温もなされ、室外に出ない限り室温は快適、逆に加湿器なども必要になるほど快適であるが、この家屋は文字通り木と紙だけの造りである。障子紙が一点破れればそこから標高数百メートルの外気が入る。慌ててホットカーペットを数枚買い込んだ。それとホームコタツ。そのカバー。シーズンになると、というより、わざわざ車で遠く離れた街中に一日中かけて、商品の選択肢も少ない中、デザイン等は妥協して暖房器具を買い込む羽目になる。

外気温はどのくらいか、と玄関先の目の高さに寒暖計を設置。その翌日確認したところマイナス4℃。「こりゃ寒いはずだ。」とよくよく見るとマイナス14℃。目をこすり再度観れば確かにマイナス14℃と15℃の間を示している。その後三日間マイナス14℃を記録したが、関西の都心部では経験したことのない気温で、寝ている間に凍死しないか一気に怖くなった。その時期、周辺地ではマイナス25℃を記録したところもあったようだ。

雪は降らずとも、気温は低い。これはこの地に住むまで考えたことのなかった事である。玄関前の庭木はキラキラ光っているし、風が吹くと天から何やら埃のようなものが降って来る。霧氷というやつだ。日本海側や東北以北では当たり前の光景なのであろうが、瀬戸内気候の温暖な地で育った庵主には強烈な印象で、そのくせまだ心のどこかではウキウキしていた。静寂の中、空気中の水分が凍って、それが一晩中降り注いでくる・・・、なんと暢気に自然を楽しんだことか。

当地の衆に話すと「いやだいやだ!こんな冬。寒いばかりで何の楽しみもなく、都会がうらやましい。」とのたまう。明らかに生まれ育った環境が感覚や意思に影響しているのだと悟った。

更にある時期10日間ほど不在にした。屋外や台所の露出している水道管には凍結防止帯を巻きつけ、電源を入れておいた。今は便利な時代で、サーモスタットで一定以下の低温が続けば作動し、暖かくなり時間が経てば自動的にスイッチが切れるという製品もある。しかし屋内の洗面所などには気が及ばず、そのままにして出かけた。

不在中、寒気が来た。天気予報で南信州も同様寒気に包まれていたのは承知していたが、帰宅し驚愕。洗濯機や洗面所の水道が出ない。当然のことであるが、人が住んでいない家の中は気温と共に冷える。室内も少なくともマイナス10℃位にはなっていた筈だ。そしてガスバーナーでカランを暖めた。

ところが、融けはじめてすぐに大変なことに気づく。カランではなく、室内露出の水道管が破裂している。その部分からは凍った氷が顔を覗かせている。寒気がまだ去っていなくて室内の超低温もそのままだったので、日中融けることもなく被害はなかったが、少し暖かい状態になっていたら水道配管から水が噴出し、不在中に家の中は水浸しになっていたであろう。そして一度流れ出した水は凍ることもないのでその数日間の間に水道料金は莫大なものになっていたであろう。

この事件をきっかけに、冬の長期外出時は必ず家中のカランを開放し、その上で止水線をしっかり閉める。

冬の寝室も要注意である。もともと板戸だったところにアルミサッシのガラス窓を嵌め込んであるが、確かにここは寝ながらにして星座が眺められ、月明かりが暗闇の室内に奥深く差し込む。昼間は温室効果で室内を暖めるためにカーテンを全開。就寝時、月光差し込む室内に入ったとたんその美しさに見とれる。しかし、悲しいかな、この部屋も入室するまでの時間帯、誰も居ないので暖房はかけていない。空気も物品もすべてが、外気温とは薄いガラス一枚で接している。

驚くことなかれ、布団がバシバシとこわい(固い)。初めての頃は不思議に思っていたが後に良く分かった。凍っているのだ。前日の就寝中の体温と身体から発するわずかな水分を吸い取った布団が凍っているのだ。もぐりこめば数十秒で柔らかくなる。電気毛布や電気行火の暖まるのを待つこともなくすぐに柔らかくなるのであるが、その瞬間は首の辺りがごわごわする。氷の中に寝ているのと同じだと大げさに考え、変に感動する。心臓の弱い御仁なら完全にアウトであろう。

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寝室から見た山々(窓ガラスに氷の結晶)

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車のフロントガラスに差し込む朝日

高齢になってからの田舎暮らしでは、極力暖かい土地を推薦したい。というより、その地その地におけるそれぞれの事情は千差万別である。また、住み慣れた土地の中で住宅を購入するのとは大きく違う。「住まないと分らない」ことがあまりにも多すぎる。拙速を尊ぶのではなく、じっくり何度も訪問し、色々な季節や行事を調べ、目に見えないような環境の変化を十分理解できるようになってから実行に移すべしだと考えている。幸いに40台初めに思い切ったアイターン。若い間で良かったと回想している。

ご参考になれば・・・。

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