『中国上海・豫園商場』骨董品購入・案内紹介マル秘情報「蔵宝楼の五階」⑫

前回投稿より再び長い時間が過ぎた。骨董市の立ち上げや新規での出店に労力を費やしていたからである。お許し願いたい。

さて、「蔵寶楼」に訪問しなくなって久しいが、今回は5階の様子を述べる。

以前、通常五階は倉庫ばかりの階になっていた。そして、一般の来訪者は入れないフロアーだった。防犯上の問題からであろう。

五階は、階段からフロアーに入る扉が普段は閉まっていた。店舗として営業しているところは皆無であったし、何より照明もなく一部の建物の窓ガラスから入る明かり以外は真っ暗で、狭い廊下にあるのは施錠され、並んだ木製の扉だけであったし、時たま下の階から上がってくる個室のオーナー(借り手)以外は誰もおらず、万が一五階のフロアーに扉を開けて入れても、警備員や他の中国人に見られれば間違いなく通報されるか身柄を拘束されそうな雰囲気である。体格のいい中国人に腕力で勝てるとも思わず、それ以前に中国語が満足に話せない身には、まず入って行こうという気にならないフロアーである。勿論、この五階の廊下で強盗に合ってもこちらの正当性を説明できないことは明白な場所である。

そこに、長年取引をしている友人の骨董商一族が二室を借りていた。三階や四階のフロアーで商談していても、そこには狭い場所に陳列された商品しか数がなく、併せて隣近所の同業者の邪魔も入るのか、彼らはある時期からその五階の彼らの倉庫の中にて商談をするように言ってきた。

当初は、少しびくびくしながら、しかし興味深くついて上がったが、それも杞憂で、友人という運命共同体(お互い利益が出ればそれでいいという彼らの持論)なのだから、大量に保管してある倉庫の中の商品を、ゆっくり見て行け、ということだった。

廊下の扉を開けると所狭しと商品が積み上げられていて、空間は歩く幅だけである。それで、「これはいいな」と思う商品を指さすと、彼らは廊下に持ち出し通路の端に並べる。床は木製なので陶磁器などは置いただけでは割れにくい。置き場所がある程度いっぱいになるとその都度商談が始まる。いつもの通り、「負けて!」「負けない!」ではなく、「いくら欲しい。」「いいや、いくらにならないと買えない。」の鬩ぎ合いである。その最中にも他の部屋のオーナーが通りかかり、ジロっと見ていく。

確かに静かでいい。商談の様子を囲んで見る者もなく、落ち着いて交渉できる。このビルには数百のテナント業者が入り込んでいるが、この五階のフロアーを借りているのは20余りの力のある業者のみで、裏返して言うと、彼らは信頼はできるが決して安くない業者、ということになろうか。

それが・・・。

数年前のある日、五階に上がってたまげた。

フロアーに入る扉は撤去され、暗いじめじめした蔵寶楼らしからぬ明るいガラス張りのフロアーに。勿論四階迄は以前のままの古風そのままの骨董ビルのままであったが、この五階だけが燦然と光り輝くフロアーに変身していたのだ。そして、倉庫なる部屋は無し、高級骨董商のショウウインドウや、展示スペース、中には骨董品で囲んだ高級顧客の応接室に変わっていた。余り来訪者はいないが、今では誰でも上がってこれるようである。

中国各地にある骨董専門のビル(古玩城)と同じ状態になっているのを見て、古き良き時代を感じさせる部分が剥ぎ取られた気がして、このビルの行く末を案じる気もした。叶うなら、四階以下のフロアーはいつまでも以前のままにて営業を続けて欲しいと思う。

次回は、四階の定期開催のフリーマーケットの様子を紹介する。

スポンサーリンク

シェアする

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

フォローする

スポンサーリンク