たまには自身取り扱う(取り扱ってきた)骨董品の紹介をしよう。今後も継続していきたい。
今回は大正期の「百人一首カルタ」。おそらく大正初期か明治末期の物。
現在の百人一首カルタが少し光沢のある上質紙などで作られているのに対し、この時期のものは和紙調、そして少しやわらかそうな芯紙で作られている。
木版だろうか、重ね刷りの見当合わせも少しずれがちで、その雰囲気はまさに骨董品、古民具という雰囲気である。
木箱に入って蓋がつき、それぞれ50枚づつ揃っている。文字は変体仮名で絵札は多彩な配色、それでいて実に札面をいっぱいに使った美しい絵柄である。
全て揃っているといっても無学な筆者には全ての変体仮名を流暢に読むことはできない。
ましてや全ての和歌や歌人の名前を覚えきっているわけではなく、横着にも各50枚づつの札が「存在する」ということだけしか確認できない。
まあ、計100枚あるなら揃っていると言っても問題はないと自己都合で満足を得ている。
木箱の側面には、大正十三年にどうとかこうとか書かれているが、要はその時に誰々から年玉として戴いたというようなことが書かれているようである。
骨董市などで同種のものをたまに見かけるが、それらも大抵は当時の贈答品に使われた旨の記載がある。贈ってくれた人の意思を大切にするという当時のよき世相が目に見えるようである。
他にも昭和初期の物も見かけるが、それらは紙質も違い、戦後暫くの物にいたっては同じ木版ではなく、平版(今で言うオフセット)印刷のものが多い。しかも変体仮名の物はほぼ見かけない。
このようなカルタひとつをとっても時代の香りというものを感じることができる。
今回のカルタの最大の特徴は、色が非常に美しいということ。まさしく西洋での第一次大戦やその後の短い時代、それが対岸の火事だった極東の日本で、現在「大正ロマン」と呼ばれるつかの間の平和を満喫した時代の匂いを色濃く表しているような気がする。
美しい配色と素朴な作り、それでいてしっかりとした木箱に納められている本品の写真を並べるので、興味ある方は楽しんでいただきたい。