『刀幣・円首刀(直刀)』中国古代貨幣について・春秋戦国

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冒頭に、鋳造貨幣の出現について簡単に述べておこう。

中国古代の貨幣で、「古文銭」と呼ばれる物は、円形の貨幣のうち、唐代の開元通宝より前の物までというのが通説である。即ち、「半両」「五銖」「貨泉」等の秦漢帝国及びその周辺国家が鋳造した古代円形貨幣の総称である。ではそれ以前の貨幣はどのような形であったのか・・・。そもそも通貨としての「貨幣」の概念は予めあった訳ではなく、物々交換から商品を仲立ちする通貨としての鋳造貨幣に至るまでには、長い長い時間の経過と試行錯誤、そしてその間に起こる為政者の民族の違いや庶民の必要とする物品の需要の違いにより、地域ごとに異なる進化を遂げてきたと考えられる。即ち、物々交換⇒示準となる商品(地域ごと時代ごとに違う)⇒大量生産可能になった金属の鋳造品⇒銅製の貨幣という順序が歴史の必然として窺われる。よく知られているのが南洋の美しい子安貝を使った「原貝貨」⇒「骨製貝貨」⇒「石や玉製の貝貨」⇒「銅製貝貨」という流れで、ここに至るまでには長い年月を要したが、地域によって「貝」以外の特産品や他の物が前述の「貝」と同様に通貨の役割を果たすべく進化した。それは青銅器である矛や銅鐸、鋤や鍬といった様な日常に縁の深い物が多く、それも時代が下り地域が統一される事によってその種類や形状も統一されて来、更には運んだり扱いやすい物になっていった。代表的な物が、今回の「刀幣」であり「布幣」であり「蟻鼻銭」であり、そして究極は持ち運びや扱いの便を最大限評価した「環銭」である。

ということで、今回の「円首刀」はその過渡期、青銅鋳造の技術が確立された直後の戦国時代の中晩期の物で、一般的には東周時代、戦国の「趙」「魏」「中山」等で作られた貨幣であると言われている。「尖首刀」「針首刀」「方首刀」とは違い、その形姿はほぼ直線状で小さな物が多く「直刀」とも呼ばれ、数は少ない刀幣である。

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写真に紹介の二つのうち、一つは戦国最晩期の「趙」の「小直刀」と呼ばれる物で片面に「白(直?)刀」の文字があり、更に小さな方は分類家によると「魏」の小直刀と推測されている。

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手持ちの現物資料が数多くないので仔細な紹介は避けるが、今後も他の刀幣、布幣についても順次紹介していきたい。

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