『南信州産フジりんご』長保ち、長野県飯田市、サンフジ、蜜果・青実、値上がり、JA南信州

小職、アイターンを目指し約20年前長野県南部の飯田市に古民家を購入、移住。とは言え現在は関西と飯田市を毎月往復。時の流れと自身の環境が変化し、人生の予期できぬことを楽しんでいる。

飯田では、印刷会社、人材派遣業、有料職業紹介、その他色々好き勝手に生きてきたが、現在でも続けている事として、南信州産の特産果実を仕入れ、販売、加工は継続している。その理由は親しい農家や地場の良さを伝えたい事であるなど色々あるが、まず、南信州産の果物は気候的に昼夜の寒暖の差が大きく、美味さには味わった事のある人には確固とした定評がある事である。桃、梨、りんご、それに最近は葡萄やキウイ等、温暖化に伴って作付けも変化しているのも実情ではある。

さて本題の「フジりんご」について。樹になっている間に袋掛けした物は「フジ」、袋掛けしない者は「サンフジ」。太陽(サン)が直接当たるので「サンフジ」である。「サンつがる」と「つがる」等も同じ違いである。最近は品種改良も進み、袋掛けしない品種も手間削減の為多くなってきたようだが、やはり11月下旬~年末収獲の「フジ」に至っては、日保ち、食味共にこれに勝るりんごはなく、津軽の頃の品種の様に味がぼける事は殆ど無い。

「フジ」や「サンフジ」には同じ品種でも農家の隠語で、「蜜果」と「青実果」という物がある。蜜果はよくご存じの、包丁で切った際に、実のあちこちに「蜜のような透明な部分が多い」果、青実果はそれが殆ど無い物。「蜜果」は良く「蜜がたくさん入っている!」と、生産者でない方々に喜ばれるものである。

ご存知の方も多いだろうが、「蜜果」の「蜜」に見える部分は決して蜜ではない。水分が果中で疎らに集まったもので、「蜜」の部分は甘くない。試しに蜜の部分のみ食していただければ納得できると思う。蜜果については全体の糖度が高いものであれば、蜜の部分以外の方が甘さが集まっているように感じる。よって、蜜果は水分の結晶(?)である蜜の部分から悪くなっていくので日保ちはしない。生産者はその事は誰も皆ご存知だ。

「では、なぜ蜜果と呼ぶのか?」と訊いた事がある。生産者の何人かに訊いたが異口同音に、「消費者が蜜のようだと言うから・・。」とか、「蜜のように見えるから」、甚だしきに至っては「蜜がいっぱい入っていると言うとよく売れ、高く売れるから・・。」との事。生産者としては値が高く売れ、消費者に人気がある方がいいに決まっているのは言うまでも無い。

「蜜果」は確かに豪華に見える。筆者も初めて食した時には「すごい!!パイナップルみたい!」と驚いた。当時(もう数十年前)はなかなか世に出回っておらず、「死ぬまでに再度このりんごを食べてみたい。」と思ったくらいだ。それから長い時が経ち、普通にある品種のりんごになったが、今でも「蜜果」の「蜜」は「甘い甘い蜂蜜」の蜜と変わらないと信じておられる方が多いのは不思議である。視覚という物は味覚に勝ることもあるいい例ではないか。

さて、「蜜果」は、保存環境によっても違うが生産者曰く、「保存は年内か1月中旬まで」。反対に「青実果」は「暖かい所でなければ家庭内でも三月くらいまでは保つ。」と聞く。別の言い方をすれば、風雨に当てなければ屋外で貯蔵し、春頃までは問題なく保管できるという事だと考え、筆者はそのようにしている。気のせいか、追熟しない筈のりんごではあるが若干美味くなるような気もしている。

「蜜果」「青実果」の違いは、生産者でも100%の判別はできない。ただ、「この樹のこの枝の部分は密果が多くなる。」「この果実の色、または艶は青実果である可能性が非常に高い。」等の経験則的な根拠で判断される。大量に買い付けする筆者も、毎年選果してみてだんだん当たるようになってきたが、正確に糖度を測るには数百万円もするセンサー糖度計に頼るほかはない。りんご選果設備のある大きなJA工場でないとそんな設備はなく、農家の簡易糖度計では完璧ではないのが現状である。それでも、糖度は測れても、蜜果・青実果の別は見極めにくいという事である。

ただ、経験則的にといってもかなりの確率で見分けられる。精度は人によって違うが要点を述べる。改めて言うが経験則なので保証はできないが、生産者も簡易判別には以下の方法を取っているようである。

まず、軸割れ果には「蜜果」が多い。りんごが樹で成熟し、中の水分が軸部分に多く集まりすぎ、弾けるのが理由。次に底部分を観察、日が良く当たり真っ赤な物、逆に青いままの物、そして筋の様に赤い部分が細い線になってオレンジに見える物。その全てに言えるが、青い部分が透き通った色になっている物は「蜜果」の可能性が高い。これは経験を重ねないとなかなか見分けられない物が多いが、一目瞭然の物もあるので可能な方は試してみられると良い。

「青実果」は「樹の匂いがする。」という人が居る。それは恐らく「青実果」全てに当てはまる事ではなく、成熟していない実というだけの理由によるもので、小さな果実に多い。成熟していないので「蜜」が集まる前に収穫された物だろう。成る枝の場所や、日射の多寡、植えられた樹の場所等による処も多いと考える。

いずれにしても、それぞれ生産者の経験則以上の判定方法はないと思う。規格化された工業製品ではないのだからそのように考えることが必要だと感じている。ともすれば加工食の様に「全て同じでないと気に入らない。」という人の言が今の世を席巻しているように感じる事もある。

さて、最後になるが、ここ一二年果物の価格が上がってきている。JA選果場が処分の代わりに放出する「格外果」に至っても、この10年で数倍に高騰した。昨年以降都会部のスーパーなどで並んでいるりんごは、もう一玉200円近い。一般の方々には信じられない事であろうが、収穫後の選果前の原価の10倍前後である。これは、ネット普及の世にあって、生産者が直接販売がしやすくなり、移送費を掛けなくても高値で売れるようになり、初期価格が上がってしまったことが大きい。それもその筈、生産者が収穫→荒選果→JAに搬入→選果→格外果は業者引取り→運搬後消費地の都会に→陳列→販売という行程を考えるとかなり人件費や運送経費のような中間間接費用が掛かることは明白で、それに倣って値上げし始めたからと言える。

筆者は大量購入を何年も続けているが(今年は680㌔購入)、生産地の地域で地形や気候による作のいい地域、丁寧に作る生産者、生産者間や地域の衆に評判のいい生産者と大切にお付き合いさせて頂いている。いずれその事が、「安くて、いいりんご」という評に繋がって行くと信じている。

蛇足になるが、良く産地の「道の駅」などで売られている生産者直販の「りんごジュース」や「りんごジャム」。これの美味いか否かは全てその原材料たるりんごの質によると言っても過言ではなく、ラベルの良し悪しなどではない。美味くないりんごで作った加工品はうまくないのは当然の事。お陰で筆者がJA加工場に委託し毎年作る「ジュース」「ジャム」は生産者が素晴らしい人なので好評至極。リピーターの方々に今年も期待されている。

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