南信州にはハナモモを村おこしの一つとして植樹し、その美しさを誇る地が多い。
駒ヶ根、伊那、飯田の南信州の各市はおろか、山あいの山村もハナモモ観光で成功している。
ハナモモは、漢字で書く「花桃」の名のとおりその美しい花が命である。実は少しはなるが食用にはしない。真紅、白、桃色、そして一樹に咲き分けるその開花期の美しさは、桜のはかなさとは若干違い、同じ「落花盛ん」の様相があるにしろ、絢爛という言葉がふさわしい咲きっぷりである。
開花期は、南信州では通常ゴールデンウィークと一致。その美しさのせいか、関西、関東、遠州や愛知からも観光バスや自家用車で訪問する人々で賑わうのが通例である。
下伊那郡阿智村の信濃比叡と呼ばれる阿智川の源流地では、この時期観光客でごった返す。20年以上前に植樹をはじめ、今では目前の山全体がハナモモで埋まる。まるで絵本の「花山」のようで、多数の鯉幟が泳ぎ、細く流れる源流阿智川の周辺がすべて満艦色となる。最近はかなり有名なハナモモの観光地になった。
信濃比叡の山すそに位置する昼神温泉。中央道上り方向で言うと、岐阜県中津川を通過しすぐに始まる長大な恵那山トンネル(約9㌔)。それを抜けるといきなり園原インターがあり、料金所を出てすぐに左に折れると信濃比叡。逆に右に折れて山を下っていくと数分で昼神温泉郷に入る。
昼神温泉は、一昨年秋、天皇皇后両陛下が行幸啓あそばせられた地で、古くからの温泉地ではないが更に一気に有名になった。
数年前から温泉郷の中心に二箇所ある足湯広場(無料)も更に整備され、土産物屋や毎朝の朝市も開催されるようになった、南信州では有数の温泉観光地であろう。
この地も数年前よりハナモモの観光地化に力を入れだした。当然のこと、信濃比叡と同じ行政体の、下伊那郡阿智村なので頷ける。
ところが今年は全国的に自然界の気候は例年より1週間から10日は早く、当地のハナモモの開花もかなり早いと感じた。
信濃比叡のハナモモ開花の様子はかなり有名になり、ネットや写真集でも見かけることが多いと考えるので、今回はその裾野、昼神温泉郷の開花の様子を紹介することにする。ただ、撮影時期は今年4月16日、今から10日前なので、現在は若干満開の時期を過ぎ、ゴールデンウィーク前半が美しさの最終時期になるかもしれない。
住み、その移ろいを毎日観ているとその差異の機微に気が付くはずだが、この時期だけ観光に訪問する方々にはそれでも美しいと感じるのであろうが・・・。ぜひ訪問してみてほしい。