■様々な製本様式■印刷製本・和綴洋本・上製本並製本

印刷会社に20年ほど勤務した。

営業受注部門から、企画・出版、そして製版・刷版・印刷・製本まで自社で行う総合印刷会社であった。デザイン部門まであり、出版に伴うイベント事業まで手がけていた。

昭和の末期、既にその頃、活版やタイプの時代は過去のものとなっていたが、組版は写植機や電算写植機全盛のころ入社し、製版はレタッチ作業など属人的な工程が多くある時代だった。

入社時は総務や人事の管理部門に配属され、結果その部門の在籍が一番長かったが、退職するまでの間にほぼ全ての工程を体験した。

その中で、一目瞭然、工程が目で見て一番わかり易く、驚くほど感心しつつ製品が出来上がっていくのを目の当たりにできるのが、検品発送部門の前工程、言うなれば印刷物の仕上げ工程である製本部門であった。

大学4年生の頃、卒業論文は製本屋に任せるか自作の和綴じ製本仕様で提出ということで、見よう見まねで物作りの趣味も兼ねて体得した和綴じとは、スピードもミリ単位での仕上げの正確さも格段に違う、驚くほど精度の高い工程に仰天したものだ。

当社で自社製本していたのは、設備の関係もあり、『並製本』が中心だった。

教科書などの耐久性を求められる物には「平綴じ製本」。これは、全頁を側面から針金で綴じて表紙を巻く。耐久性はあるが本の背まで開けない。

世間でごく一般的な「無線綴じ製本」。解けた高温の樹脂で出来た接着剤ホットメルトで、丁合された本文の背中に表紙を巻く。ごく稀にその接着剤が外れてしまい落丁が起こる。その他に当社ではこの「無線綴じ製本」の一種である、表紙を巻く前の本文の背に布等を一旦巻く「かがり製本」や、背に穴を開けホットメルトを押し込む「あじろ製本」は基本的に行わなかったが、時代の流れからか殆どといっていいほど受注されなかった。受注があった場合には、効率上、外注製本に回された。

雑誌などにとく使われる「中綴じ製本」は豪華さはないが、本のセンター見開きページ以外は綴じた針金も見えず、全てのページの絵柄が開ききった状態で見える。ページ数が少なかったり、見開き写真などのように大きな絵柄の表現にふさわしい製本様式である。

たまに上製本の仕事が入ってくる。表紙が分厚く、それでいて本文よりも少し表紙のほうが大きい。羊皮紙などを使った上等な物まで各種多様であるが、これらは全て手作業製本である。

『上製本』には「背丸」と「背角」がある。前者は手作業で本の背の湾曲を出す。

『上製本』『並製本』共に、扉や見返し部分が付くかどうかでも本の格式が決まる。一冊の本に用紙の違った部分があったり、折込ページがあったりするとそれらは事前の手作業が必要になる。

強いて言えば、「二つ折り」や綴じずに新聞のように丁合のみでページ構成される8ページや12ページ物のチラシの類なども「綴じなし」の製本様式であることは間違いない。

日頃、一般的に見かけるこれらの様式の長所短所は勿論のこと、製造現場にいた故、その製本工程の難易度や、購入時に注意してチェックすべき点はほぼ解る。

雑駁な説明に終わったが、以下に少しまとめる。

●上製本・・・「背丸」「背角」あり。

●並製本・・・「平綴じ」「無線綴じ」「中綴じ」あり。無線綴じには「あじろ製本」や「かがり製本」も含まれる。中綴じには「綴じ無し」のものもある。

●「和綴じ製本」・・・基本的に中国や朝鮮の物も同じ仕様。

●「巻物」「軸物」「木簡仕様」・・・これらも広義の製本様式と言えるかもしれない。

読者は皆お気づきであろうが、書店にて現代並んでいる物は大抵がこのどれかに当てはまる。

釈迦に説法になるがご容赦いただき、ご参考までに・・・。

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