■贋作・見分け方■例:文房四寶『青花(染付)陶磁硯』

「贋作・見分け方」と題し、例をあげ、それぞれ見分け方やその判断理由について紹介する。初回はご覧の青花陶磁硯である。

SN322790

SN322789

SN322791

文房四寶「筆墨硯紙」の雄、硯ではあるが、今回紹介の物は清朝中期から末期の文人趣味の粋、青花(日本では染付けと呼ばれる)文の白磁硯である。これを贋作と判断するにはあきらかな理由がある。「陶磁硯」「文房具」そして「骨董品」としては別に贋作ではなく、少し「時代」の部分のみ民国中期という感じでずれてはいるが五十歩百歩、大きな間違いはないであろう。骨董陶磁器としては本物でも、本来の用途には使えない物を売る為の加工品である。よくご覧頂きたい。

文房において、文人が雅趣を求め干渉する為の磁硯である。磨墨は大量ではなく、実際の使用には朱墨や色墨、そして顔料等を溶くために使うのが陶磁硯の使用法の主流である。この硯には墨堂の部分に丁寧に下手くそな色が着けてある。そして墨堂の端に小さな穴が開けられてある。ここから墨汁や、溶いた顔料等を中に流し込むと、ある程度の磨り置きができる。若しくは水を入れてこの硯自体を水盂や筆洗兼用に使う。実際に実利も考えた鑑賞できる白磁硯であり、しゃれた文房四寶であると考える。

しかし!である。硯背(底の部分)をよく見ると、後出来の傷ではないが焼成時の「にゅう」が入っている。それもかなり大きい。当然心配する事はここから墨液が漏れずに硯の中に溜まるかということである。早速試しに水を墨堂の孔から注いで見れば、恐れていたとおり水は溜まらず、あっという間に漏れ出した。これではただの飾り物や紙鎮としてはいいが、硯としての使用は不可能である。

硯としての使用が出来ないのであれば使用はされていない筈である。それにもかかわらず、墨堂には色が着いている。これは明らかに駄作の硯に、それでも販売する為に色を塗った『「使用できる硯」の贋作』である。このような間抜けな贋作もある。

しかし、商品の色合いや姿、そして今回のように水盂兼用という珍しさに惚れ込み購入を企図し、価格交渉に進むとそのあたりに気がつかないこともある。実際筆者が所有しているのだから「体験者は語る。」で、実際にそうなのである。購入時は、その使用目的を良く考え、可能な限り実際に使う状態にまで踏み込み、深く調べるべきなのである。

明らかな贋作を作る方も間抜けだが、それを何も考えず購入する方にも責任があると反省至極。暫くは、側面のその白い白磁の肌と、青花の絵柄の鑑賞だけで満足する事にする。

スポンサーリンク

シェアする

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

フォローする

スポンサーリンク