●房総の名所●下総香取『多田朝日森稲荷神社』

利根川右岸沿いに国道356号線を西進、香取市市街地を過ぎたあたりから内陸部に進むと、県道55号線沿いにいくつも並んだ赤い鳥居と幟が見えてくる。丁度バス停が脇にあり、その間が駐車場になっている。案内板には奥に大型駐車場があるとのことだが、そこへ至る100メートル余りの道は細く、駐車場は舗装もされておらず表示も見つけにくいのでお勧めはしない。社の正面が車行きかう県道になっており、脇の駐車場に駐車できればすぐ横に正面に通じる鳥居があるので、一旦鳥居の前で拝礼し、その道を通れば安全であろう。

CA3H0088

CA3H0049

石造りの正面鳥居から奥を視ると、なるほど『お稲荷さん』らしくいくつもの赤く塗られた鳥居と赤い幟が奥の方まで並んでいる。全国に祀られている稲荷神社と変わりは無い。両脇には一対の灯篭と何対かの赤頭巾を被った「御狐様」。その周囲には焼き物の狐がいくつか置かれている。信仰心溢れる信者の置いたものであろうか・・。

CA3H0057

鳥居をくぐる。ここの鳥居の列はいくつもあり、くぐっている間に両側を視ると、朽ちて色が剥げ、根元が腐り将棋倒しのように倒れ掛かった鳥居が同じ方向に並んで密集している。あたかもジャングルの中を歩いているようだ。鳥居の根元にも所々狐の焼き物が置かれている。鬱蒼と暗い鳥居の通路の中で、その焼き物の狐の白さが極まり、畏怖の念さえ憶える。鳥居のトンネルの中を、進行を遮るかのように垂れる幟を掻き分るように先に見える本殿に進む。短かい距離なのですぐに通り抜けたが、互いに触れ合うほどに立てられた隧道を抜けるには時間がかなり長く感じられた。

CA3H0085

抜ければ明るい。開けている。というのも、そこは神社本殿のある敷地ではなかった。どうしたことか、車の走れる広さの道が左右に通っているのである。不思議な感覚に陥る。そのままその数メートルの道を渡り再度大きな鳥居をくぐる。お稲荷さん(稲荷神社)なのでここにも鳥居は複数ある。大きな鳥居ごとに掲げられている額もいくつもある。書かれている文字は意味は同じだ。『朝日森稲荷神社』『多田朝日森稲荷神社』『多田稲荷神社』『多田朝日森稲荷』・・・。

CA3H0051

再び鳥居をくぐって異次元を感じる。参道の両側に、苔生し、あるものは顔や身体の一部が欠けた、表情や大きさが違うおびただしい数の「御狐様」がこれまた頭巾を被りこちらを睨み付けているのだ。一瞬ひるむ。落ち着いて見ると、辺りには参拝者や信者による焼き物の狐も大小問わず境内のあちらこちらに無数に置かれている。中には木彫、石製のもの、樹脂製の可愛いい表情のものも混じっている。奉納用に設置された雛壇にも所狭しと並んでおり、その数は数え切れない。

CA3H0080

CA3H0080

CA3H0079

CA3H0079

CA3H0075

10メートルほど進むと、縄で編んだ大きな輪がある。おそらく結界か、ここを通らなくてはいけないのだろう。その背後には一対の巨大な石造りの「御狐様」が恐しいお顔で聳え立ち、その先が本殿である。これが観光案内等で紹介されている日本一の「眷属」なのだろう。意外と新しい風貌である。古い小さな苔生した「御狐様」の方が迫力がある。そして、バッタのような意味の無いお辞儀を繰り返しながら、一気に本殿まで進み拝礼させていただいた。神社に参り、色々念じたり感謝したり謝ったり、厚かましくお願いするのはいつもの事だ。しかしここでは「御狐様」にしか報告できない報告と許しを請う事も忘れなかった。それは今は明かせないことをご容赦いただきたい。

CA3H0063

CA3H0073

CA3H0074

さて、拝礼が終わり、やっと落ち着いて境内を見わたすと、本殿の右手の方に社務所が。この社の縁起を伺おうと声を掛ける。週番という初老の男性に社の起こりや祭事等を色々ご教示いただき、一番霊験あらたかそうな御守を拝受する。御守の種類はかなりあり、先程来境内に並べられていた焼き物の狐も大きい物から小さな物まで何種類もあり、これもここでお金で買えるそうである。まさか回収した物を再販しているとは思わないが、意地悪く真面目な顔をして値段を聞いてみた。一万円近くする物から小さな安価な物まで段階的に値段が決められているようであったが、一番小さな物でも千円では買えないと聞いて驚いた。

社務所の脇にある境内同鎮の天神社についての碑を読み、更に奥に祀られている菅公(菅原道真公)にもお参りすることにする。大阪天満の地で菅公の一文字を関した中学を卒業し、そして書にかかわる自身にとっては当然お参りしなければいけない社である。稲荷神社本殿の裏手に回り『朝日森天神社』と書かれた額の掲げられた鳥居をくぐる。ここも石造の鳥居と木造の鳥居が連なっている。くぐり終えた所は菅公ゆかりの大きな牛が。「御狐様」は居ない。何故か少し安らぐ。

CA3H0064

社務所にて境内の写真撮影を許されていたので、本殿の御神体以外の社内風景を少し撮影させて頂いた。本殿の正面に立つ「眷属(御狐様)」は日本一の大きさとのことで、霊験顕大なるものと考える。夜間のお参りは周辺地域の裏寂しさともあいまって、かなりの勇者以外にはお勧めはしないが、古の三大神宮の一つ香取神宮からも近く、下総周遊の折には是非参拝されてはいかがであろうか。

CA3H0089

スポンサーリンク

シェアする

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

フォローする

スポンサーリンク