●南信州の名所●希少樹『山本のハナノキ』(長野県飯田市)

『山本のハナノキ』は、長野県飯田市の南部、中央道飯田山本インターの西方、山本集落の山麓側にそびえる、希少且つ、この種としては巨樹である。車でなら、インターチェンジを出て10分足らずで着く。数年前までは集落の外れの疎水際に大きなオニグルミの樹と並んでひっそりと立っていたが、最近説明表示板などと共に周囲を鉄柵で囲われ、周囲の草むら等が一掃され綺麗に整備された。以前の藪のような足場からは想像がつかないほどに足場もよくなったので是非訪問してみて欲しい。

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カエデ科カエデ属の種名は「ハナノキ」。「ハナカエデ」とも呼ばれるこの樹は、日本の固有種で、雌雄異株ながらどちらも葉の出る前に梢端に多くの赤い花をつけるところから「ハナノキ」と呼ばれ、長野、愛知、岐阜の木曽川周辺の湿地帯及び他の一部の地域にしか見られない、絶滅危惧Ⅱ類に指定されている希少樹である。南信州においても自生種は希少な樹である。春の花、夏の緑葉、秋の黄や赤の紅葉、そして冬の立ち姿。いずれをとっても美しいこの樹は小家の庭にも屋根を見下ろすように聳え立っている。

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「山本のハナノキ」周辺ではこの10年あまりの間に2度もの住宅火災があった。飯田市民にとっては、旧飯田市街のほぼ全てが消失した戦後の日本三大大火の一つである大火災を髣髴とさせ、この2回の火災の折も全市に放送される防災広報放送で火元の建物所有者の名前まで放送されたという。すぐ近くにあったこの樹もものは言えずともかなり肝を冷やしていたであろう。余談はさておき、小さいながらも今では周囲には集合住宅の駐車場を隔ててその建物以外何も無く、じっくり観察するにはいい環境になったと感じている。以前は前述の伐採された巨大オニグルミの樹がすぐ横にあって周辺は昼なお薄暗く、晩秋になるとその硬い実が突然落下していた。観ている間に落ちた実のせいで車の屋根がニ三箇所凹んだほどで、人間の頭に直撃すれば、と考えると危険極まりなかった。(胡桃の実を拾って帰るのは嬉しかったが・・・。)

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ここの樹は雄株で樹高23メートル、枝の広がりは南北、東西とも20メートルを超え、「ハナノキ」の自生木では最大という巨樹である。共に化石植物として祖先が同じ近縁種は北米大陸にのみ隔離分布しているが、本種の国内分布も長野県大町市の湿原に隔離分布している。その他の地方の物は植樹された物が殆どである。

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この南信州の珍樹巨木『山本のハナノキ』は昭和40年に長野県の天然記念物に指定されているということである。水路をまたぎ、車2~3台程度は駐車することが出来る場所はあるが、水路にかかる橋の幅が極端に狭いので注意が必要であることを情報として付け加える。

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